深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
身体中を洗っても。
本を読んでも、気晴らしに外をぶらついても。
何をしてもどうしても記憶の隅から離れないあの感覚に、私はさらに頭を抱えた。
(…なんなの、もう)
―――案の定、夜でも煌々と明かりのついた私の部屋から寝息らしいモノが聞こえることはなくて、私はやっぱりしっかりと隈をつくって月曜の出勤時間を迎えたのだった。
(―――あ、)
月曜の朝、出勤してまもなく営業部に書類を届けるため私は廊下を歩いていた。
その廊下の先からきゃあきゃあと声が聞こえてきて、思わず身体が強ばってしまう。