深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
煌びやかな女の人たちに囲まれているその人―――芦谷さんは、人だかりの真ん中で満更でもなさそうに笑っていた。
(やっぱ、女に不自由してないじゃない)
―――そう思ったら、心臓がちくりと痛んだ。
…何、考えてるんだろう。
原因不明の痛みに戸惑いながらも顔を伏せて、その横を通り過ぎようとしたときだった。
「―――環!?」
焦ったような慌てたような、その声に私はついうっかり足を止めてしまった。
ぱっと顔を上げればそこには、心配そうに私を見つめる芦谷さんと私をにらみつける女の人たち。
そこにいる人たちの視線が集中するのを全身で感じて、嫌な汗が私の背中を伝っていった。