深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「なんだァ?…やっぱちゃんと寝れてないんじゃねぇのか」
固まる私と女の人たちの集団を尻目に、芦谷さんは私の顎に手を添えて顔をのぞき込む。
そんな私の視界には敵意混じりの視線。
…煌びやかな外見に彼女らをまとう甘い香り。
冷たい、まなざし。
―――同じだ。
私を嫌う、あのまなざし。
「は、…はな、して!」
私は、彼の手を払いのけるとその場から走り去った。
どこに逃げたらいいかなんてわからないけど。
ただ、遠く遠く。
あのまなざしから、私は逃げた。