深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
どうしようもない恐怖が私の心をえぐっていく。
思い出したくもない記憶を思い出した。
…あの冷たい目をして私を鎖に繋いだ母親が脳裏をちらついて、そのたびに苦しくなる。
耳元でジャラ、ジャラと音が聞こえる。
私が動く度に、鎖が絡まって音が大きくなって。
(息、できな――…)
「―――――大丈夫か!?」
次の瞬間、廊下にうずくまっていた私を芦谷さんは簡単に抱き上げた。
血の気の失せた顔で口をぱくぱくさせている私はただの異常者に見えるはずなのに、躊躇なく触れてくる。
その真っ直ぐさにすら私はおびえていた。