深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





それから、途切れ途切れになりながらも私は話した。


鎖付きの枷で私を繋いでそのまま帰ってこないこと。
近所の人が助けてくれて、孤児院に入れられたこと。
母親を思い出すのが怖くて未だにおしゃれができないことと、そのことでいじめられたりもしたこと。



「………死に物狂いで大学に通って、この会社に入って、…あとはもう、一人で生きていけるくらいのお金があれば十分だと思ってました」


そう言って虚ろな視線を芦谷さんに向けて、私は小さく息を吐いた。


―――さぁ。
もういいでしょう、私にかまっていてもなにもいいことなんかない。




そのつもりで話したのに芦谷さんは相変わらず私の頭を撫でていて、時折何か言いたげに口を開いては諦めるのだった。





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