深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
芦谷さんの部屋への二度目の訪問だった。
改めて見渡すと、男の人らしい落ち着いた最低限の家具以外はなにもなくて、本がぎっしり詰まった本棚が印象的だった。
部屋の隅には私の着替えを買ってきたんだろう、某ロープライスの衣料品店の袋が置いてある。
(…本当に私と住むつもりなんだ)
「環。すぐ飯作るから待ってろよ」
ぼんやりその場に突っ立っている私の髪をくしゃっと撫でるのは、いつの間にかスーツから私服に着替えていた芦谷さん。
ついでにと新品のルームウェアを手渡された私は、案内された脱衣所で着替えることとなった。