深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
ぼんやりとソファに座っていると、隣に人の気配がした。
視線をやればお風呂上がりの芦谷さんが心配そうに私を見ている。
「―――寝るぞ?」
髪を下ろした芦谷さんはうっとおしそうに髪をかきあげ、私の手を取って寝室へと歩き出した。
先にベッドの中に促された私のすぐそばに身体を滑らせ背中に腕を回す。
柔らかな石鹸の香りに、私は安心してため息をこぼした。
「安心して寝ろよ。………環は、俺が守るから」
その声に。
腕に、体温に匂いに。
全部に縋って、その日私は眠りについていった。