深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
―――夢の中で、私は芦谷さんと手を繋いで歩いていた。
芦谷さんは黒のタキシードを着ている。
彼の隣にいる私は、純白のウエディングドレスを身にまとって笑っている。
幸せで、幸せで。
私はとろけるような笑顔で芦谷さんを見上げていた。
「……………ぁ」
…なんて夢を見てるんだろうか。
まだ辺りは夜の闇に包まれていて、隣からは静かな寝息が聞こえる。
私は寝返りを打って芦谷さんに背中を向けると、まなじりに浮かんでいた涙を拭った。