深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「………た、まき…」
不意にそう呼ぶ声がして、私は後ろを振り返ろうとした。
でも次の瞬間ぐいっと強い力に引き寄せられ、私はすっぽり芦屋さんの身体に包まれてしまう。
(うわ、近…!)
首筋に当たる柔らかな感触と、くすぐったい吐息。
普段よりも少し高い体温が私をすっかり覆い隠してしまっている。
(眠くなってきた…)
まぶたが少しずつ重くなる感覚が私を襲っていったときだった。
「好きだ、環――…」
寝言にしてはやけにはっきり告げられた一言に、また現実に引き戻されてしまったのだった。