深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
(まぁ…でも)
芦谷さんなら女に不自由してないって話だし、きっとその中に私と同じ名前の人がいたんだよね!
私みたいな女を、好きになんか――…
「…なるはず、ない」
自分でそう言っておきながら、心臓が絞られたみたいに痛む。
私が自分の頬を軽く叩き、淹れ終わったコーヒーをトレーに乗せてキッチンスペースをあとにしたときだった。
「……………だなぁ、直人!」
芦谷さん以外いないはずのこの部屋で、芦谷さん以外の声がしたのだ。
私はおそるおそる戻ると、二人に声をかける。
「、あの」