深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
私の声に二人一斉に反応してこちらを見る。
「ずいぶんと綺麗な子だね」
そう言ったのは初対面の男の人の方だった。
―――芦谷さんが男らしい端整な顔立ちならこの人は女の人のように綺麗で、特にそのふわふわの茶髪が可愛らしくもある。
そんな人にお世辞でもほめられて、私はもう何も言えなかった。
「…おい、侑。早速口説くな」
すると芦谷さんは私の前にやってきてトレーに乗ったマグカップを手に取っていく。
どちら様ですか?と小声で訊ねれば、芦谷さんはなんだか驚いたような顔で私を見た。