深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
時間にしたらほんの数分だった、と思う。でも私には永遠に続くように思えたんだ。
―――指先からだんだん冷たくなっていって、生きている心地もない。
手に持っていた資料室の鍵が力の入らない掌から滑り落ちていって、カチャンと音を立てて床に落ちる。
その次の瞬間、人の声がした。
「―――誰かいるのか?」
そう聞かれても震える唇は満足に言葉を紡げない。
真っ暗だった資料室に再び明かりがともっても私はその場にしゃがみ込んだまま、呼吸をすることだけに精一杯だった。
(な、い………)
足元に私を繋ぎとめて離さない鎖がないことだけが、救いだった。