深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
背筋に電気が走ったような気がした。
―――心臓が甘く疼いて、舐められたところが燃えるように熱くて。
私の掌を自分の頬に当てる芦谷さんを直視できなくて、私はとっさに俯いてしまう。
しかも、それが嫌じゃないなんて、…嬉しいだなんて、知られたくなかったから。
「…あんま嫉妬させんなよ」
「しっ、と…」
そう繰り返すと、芦谷さんの頬に触れる手がいっそう熱を帯びる。
「消毒だよ。―――ほかの男なんかに触られてんじゃねぇ」
そう話す芦谷さんは首まで真っ赤になってしまっていて、その姿を目の当たりにした私は頷くことしかできなかった。