深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
「…なんだ、人いるんじゃねぇか。返事しろよな」
いつの間にか私の姿を捉えたのか、声の主は私のすぐそばまで来ていた。
どうやら男の人らしいそれはいくらか乱暴な言葉遣いで私に話しかけてくる。でも、私はまだ口を開く余裕がなくて返事ができない。
しゃがみ込んだまま何も言わない私にしびれを切らしたらしい彼は、私の肩を掴んで顔を覗こうとする。
しかし思った以上に力が強くて、その拍子に私は床に身体を投げ出してしまった。
「な、…おい!大丈夫かよ」
「……………い、丈夫、です」
やっと呼吸も落ち着いて、話すことができるようになった私がそう返すと、目の前の彼は私の顔をまじまじとのぞき込んでいる。