深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
9. 強く吹くは追い風
元に戻っただけだった。
電気は常につけっぱなし。
眠りは浅く、眠れない日もある。
そして、前にも増して夢を見るようになった。
鎖で繋がれた子供の夢。
…もう二度と、幸せな夢なんて見ない。
―――翌日会社に向かうと、役員室に芦谷さんはいなかった。
急遽大阪に出張になったらしく、一週間ここを空けるというメールが入っていて私は複雑な気持ちになる。
会ってもどんな顔をしたらいいかわからない。
でも、会えなかったら寂しい。
(…馬鹿だなぁ)
そう一人ごちて、私は仕事に手をつけていくのだった。