深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
でも、その言葉にユウさんは首を振った。
「昨日僕も大阪にいてね、直人に会ったんだ。アイツも今の環ちゃんと同じだったよ」
「………芦谷さんは関係ないですから」
「そうかなぁ。…おかしいのはあのCM撮影の日からだよね、あのとき急に泣いたじゃない。今もあのときみたいな顔してるよ」
全部お見通しと言わんばかりの笑顔を私に向け、ユウさんは優雅にお茶を飲んでいる。
立ち尽くす私に座るよう促すと、さらに話し続けた。
「―――僕は詳しい事情を知らないけど、少なくとも直人が女の子のことであんなに落ち込む姿を見たことないよ。寄ってくる子を片っ端から相手して、三日ともたない奴だったからね」