深海の眠り姫 -no sleeping beauty-





(…やめて)


聞きたくない。
ユウさんの話をこれ以上聞きたくなくて、私は代わりにぎゅっと目をつぶった。


そんな、私に都合よく聞こえる話。
これ以上聞いたら、苦しくなるばかりじゃない。



「………私は、芦谷さんからしたらペットと同じだったんです。だから、…この話は止めにしませんか?」


私はそれだけ告げて、自分の席に戻った。
するとユウさんは小さくうなって、すらりとした足を組み出す。



「そういえば直人、あの日そんなこと言ってたね。…馬鹿な奴、自業自得といったところだね」


呆れたようにそう言うと、私に例の王子様スマイルを向けるのだった。





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