深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
こんな整ってる人、初めて見た。
それが彼への第一印象だった。
長めの髪はきれいにセットされている。少しつり上がった瞳を有する精悍な顔立ちが、さっきから私をじっと見て視線を逸らさないのだ。
「な、何…か?」
「―――いや、きれいな顔してるのに顔色よくねぇから…」
大丈夫か、と付け足す彼。その彼に私は軽く頭を下げて私は立ち上がろうと棚に手をかけた。
ぐらりと身体が揺れたと思った次の瞬間、目の前の彼は私の腕を引いて自分の方に寄せる。
「具合悪いなら早退しろよ?危なっかしすぎるだろう」
…あんたのせいだ、とは言い出せなかった私はその場で俯くのみだった。