深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
『環ちゃんには悪いようにしないから僕に任せてくれないか』
そう言うとユウさんは私の頭を撫でて、部屋をあとにしたのだった。
「―――って言ってもなぁ…」
一人残された私はため息をついた。
別に、もういいのに。
私と芦谷さんは別に付き合っていたわけでもないし、…私がただ、勘違いしただけなんだから。
そう考えたところで不意に眠気が私を襲う。
誰もいないからと大きくあくびをすると、つい笑ってしまった。
「…ここで眠くなるんだ」
いつも芦谷さんと二人でいたこの役員室。
一人でいる今でも彼の気配がするようで、安心するなんて馬鹿みたい、だわ…