深海の眠り姫 -no sleeping beauty-
10. プリンセスへの魔法
―――この世でこんなに幸せなこと、他にはないんじゃないかな。
そう思いながら目覚める朝。
まぶたを開けるとそこにはにこにこ笑っている芦谷さんがい…て………?
「―――わぁ!え、芦谷さん…?」
「おはよ。よく寝てたな」
芦谷さんは私の上に乗り、顔にかかる私の髪をその指で左右に払ってくれる。
そのまま顔を近づけてきたかと思うと、ちゅっと私の唇を奪った。
「隙あり、ってな」
一瞬何をされたかわからなかった私だったけど、目の前で自分の唇を舐める芦谷さんの姿にだんだん気づいて、それで。
恥ずかしくなって思いっきり布団をかぶると、クツクツと芦谷さんが笑う声がした。