君のために僕は泣く
短いホームルームも終わり、授業を受け、もう昼休みになった。


玲子は裏庭で郷とお昼ご飯を食べるのが日課となっている。


玲子は購買で買ってきた甘いメロンパンにかじりついた。


郷は綺麗に包まれているお弁当箱を開いた。


「またお母さんに渡されたの?」


玲子は郷のお弁当を見ながら言った。


「あーまあなあ。ババアがうるせーんだよ。まあ、食わないともっとうるせーから仕方ねぇから食うんだよ。」


郷は悪態つきながらそう言ったが、内心嬉しそうに玲子には見えた。


お母さんのお弁当か…。


もう何年も誰かの手料理なんて食べてないな。



母親か………。



もうあたしには関係ない人間だ。



玲子が暗い顔をし、メロンパンを握りしめたままいるので郷は玲子に抱きついた。


「れいーこ!」


「きゃあ!?何すんのよ!」


いきなり抱きつかれたので玲子もさすがに驚いた。


「俺のババアの卵焼きだ!受け取れ!」


郷は卵焼きを口に含み、口移しで玲子に渡した。

玲子の口の中には少し温かく甘い卵焼きが広がった。


「意外とうめぇだろ?」

郷はいたずらっ子みたいな笑顔を見せた。


「美味しいけど。勝手にキスすんな、バカ!」


玲子はコツンと郷の頭を叩く。


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