未恋 ~東京卒業物語~
あたしはその手を払い除けた。

「“なんばすっとや”だと?フッ。田舎もんが」

「博多は田舎じゃないですっ」

「東京以外は全部ひっくるめて田舎だ」

「東京がそんなにエライんですかっ?」

「東京生まれ、東京育ちのコノ俺が、田舎のねーちゃんを都会の色に染めてやろうとしてるんだ。むしろ感謝してもらいてェなっ」

再び左手をあたしの太ももに伸ばすアイツ。

「やめてっ……やめてくださいっ」

あたしはシートベルトを外して、助手席のドアを開けようとした。

「バカ! 飛び降りたら死ぬぞ!」

慌てたアイツがハンドル操作を誤って、四駆はラブホテルの駐車場の壁に激突しかけて…、

「キキィーッ!」

…と寸前のところで急ブレーキで止まった。


あたしはドアを開け、四駆から飛び出した。

「オイ、待てよ!」

でも、あたしは振り向かないで走り続けた。

「ちぃっ! お前なんか田舎に帰っちまえよ! 帰れよ、イモ! 田舎のイモねーちゃんよォ!」
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