未恋 ~東京卒業物語~
その声が駐車場内に反響して、わんわんとエコーがかかった。
じわっ…。
いつの間にかあたしは泣きながら走ってた。
夜の街が涙でにじんだ。
地下鉄に乗ってドアの近くに立つと、窓ガラスに浴衣姿で泣いてるあたしが映った。
浴衣まで用意して、指折り数えながらずっと楽しみに待っていた花火がこんなひどいことになっちゃうなんて……。
でも、泣いてるあたしのことを見ても、まわりの人たちはさして気にとめる様子もない。
“こんなに人がいっぱいおるとに誰も……誰も、あたしにかまってくれんとぉ……東京って……なんて冷たか街なんやろ……”
地下鉄を降りたあたしは急いで電話をかけたくて、アパートに帰るまでの時間さえガマンできなくて、途中の公園に立ち寄った。
街はずれの遊具も何もない小さな公園には、あかあかと外灯がともっていて、ソレに誘われる蛾(が)のように、あたしは光の下へと歩いていった。
着信履歴からリダイヤルするあたし。