未恋 ~東京卒業物語~
「プルルルルル…、プルルルルル…」
向こうが電話を出る前に嗚咽を止めようとするけど、なかなかソレが止まらない。
「プルルルルル…、プルルルルル…」
今夜は熱帯夜なのか、風もなくて、まるで蒸し風呂のような暑さで、汗が全身を滝のように流れて伝っていくのが分かる。
「プルルルルル…、プルルルルル…」
留守なのかな…?
でも“留守番電話に切り替わらない”ってことは留守じゃないってことだよね?
いや、でも単に切り替えを忘れたまま外出してるってことも考えられなくはないし……。
「プルルルルル…、プルルルルル…」
お願い、はやく電話に出てっ…。
あたしは祈るように両手でケータイを“ギュッ”と握り締めた。
「プルルルルル…、プルルルルル…」
すでに呼び出し音は十回を超えている。
家の固定電話じゃなくて、やっぱケータイにかけたほうがよかったかな…?
「プルルルルル…、プルルルルル…」
それから、さらに十回の呼び出し音が鳴った。