未恋 ~東京卒業物語~
「もしもし…マサ兄ぃ……?」

「一人暮らしで誰が他に電話に出るとや?」

「マサ兄ぃ……ホントにマサ兄ぃだ♪」

ほっぺたで汗と涙がミックスされて流れた。

「なんね? 当然電話ばしてきて。あ、分かった。雪ダルマのこつたいね」

「雪…ダルマ……?」

「安心しないや、無事ばい。お前の大事なモンやけん、傷一つ付けんと大事に大事に扱こうてきたとぉ」

「…!」

「ウソやと思うんやったら今度見に博多ば帰ってきないや。山笠も、もうすぐやけん」

「嬉しかぁ。マサ兄ぃのそげなやさしさがホント嬉しかぁ。あたし、マサ兄ぃのこつば好いとぉ。ホントにホントに好いとぉけんねっ」

嬉しくて、嬉しすぎて、あふれる涙が止まらない。


あたしンちとマサ兄ぃンちは、あたしが生まれる前からずっとずうっとお隣さん同士で、気がつくといつもあたしはマサ兄ぃといっしょだった。

一人っ子のあたしはマサ兄ぃのことを血のつながったホントのアニキみたいに思ってた。

でも本当はソレは違うことにいま気がついた。

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