未恋 ~東京卒業物語~
少なくとも“子ども”と呼ばれる人間なら、100%まちがいなくはしゃぐ。
同じものを見ても感じ方が違うのは、それぞれの体験が違うんだからしかたがないし、そーいう意味でマサ兄ぃはオトナだった。
「あ~、もう好かん。これでまた道路が渋滞するばい。弥生ちゃんも今日はいつもより早い時間のバスで学校に行きないや」
「残念やなぁ♪ 今日、学校は臨時休校や♪」
「じゃあ、なんで制服なんか着てるとぉ?」
「休みなのを知らんで出掛けようとしたところに、学校の連絡網がまわってきたとよ」
「ふぅん、臨時休校か…。それで今朝は機嫌がいいとやね。うらやましかぁ……」
「モチロンそれもあるばってん、あたしは雪が積もったことが嬉しかよ♪ どげん降ってん積もらん雪は全然つまらんけんね♪」
「それにしてん、小学生ならともかく高校生にもなって、雪が降ったけん学校を休みにするなんか、少し甘やかし過ぎじゃなかや?」
「あたしが頼んだんやないくさ。学校が勝手に休みにしたとぉ。それよか、トイレ貸してほしかよ、トイレ、トイレっ」
「トイレくらい、俺ンちに来る前にちゃんと済ませてきないや」
「さっき家でトイレはしたとぉ。じゃけん、あんまり寒いけん、またトイレに行きたくなったくさ。あ~、もぅ、漏れる、漏れるっ…」