未恋 ~東京卒業物語~
そう言いながら冷凍室の扉を開けたマサ兄ぃが次の瞬間、唖然としたような声をもらした。
「ア……」
「ソレ、ゼッタイに壊したらダメやけんね」
「誰が冷凍室に“こげなもん”入れたとぉ?」
「誰って。自分で歩いてくるはずなかよ。その子、足が無かもんね」
冷凍室の中に、冷凍食品を脇に追いやって小さな“雪ダルマ”が置かれている。
マサ兄ぃがいないあいだに、さっきあたしが用意していたものだ。
「今年の雪は多分この雪で最後やけん、雪ダルマを作って思い出にするとぉ」
「…ったく。弥生ちゃんはいつまでたってん子どもんまんまばい」
「そげなことなか。4月になったら東京の女子大生くさ♪ めちゃめちゃオトナくさ♪」
あたしはファッション雑誌のモデルのようなポーズを決めて、そのあまりのカッコよさに思いっきし自己陶酔した。
「どげんね? うわ、カッコ良かぁ~♪」
だけど、すかさずマサ兄ぃがつっこんだ。
「東京に行く前に、まず“なまり”ばシッカリ直さんとな!」
あたしは“ハッ”と両手で口を押さえた――