未恋 ~東京卒業物語~
第2章 「ふるさとサヨナラ」
3月下旬のある日のこと。
南から北上していく桜前線といっしょに、あたしもまた福岡から東京へと北上することになった。
「弥生、東京の部屋に着いたら、こないだ買ってあげた浄水器ば付けて、くれぐれも生水(なまみず)だけは飲まんようにするばい」
空港での別れしな、母さんが言った。
「ホラ、父さんも弥生になんか声かけてやらんね」
「………」
父さんはあたしが東京に行くことを最初っから反対していた。
母さんが味方についてくれたおかげで、憧れの東京に旅立てることになったんだけど、一人娘を東京に行かせることを心配する父さんの気持ちも分からないじゃない。
「父さんの知り合いの娘さんのハナシなんやけどね、大学生になって東京に行ったとたん、こう……なんていうか、変わったというか、派手になった娘さんがいて、それで父さんは心配してるとよ」
「母さん、こないだも言うたけど、あたしは大丈夫やけん、心配はいらんとぉ」
「そうそう。お父さん、そーいう意味での心配なら、弥生ちゃんには無用ですばい」
いっしょに来ていたマサ兄ぃが言った。
南から北上していく桜前線といっしょに、あたしもまた福岡から東京へと北上することになった。
「弥生、東京の部屋に着いたら、こないだ買ってあげた浄水器ば付けて、くれぐれも生水(なまみず)だけは飲まんようにするばい」
空港での別れしな、母さんが言った。
「ホラ、父さんも弥生になんか声かけてやらんね」
「………」
父さんはあたしが東京に行くことを最初っから反対していた。
母さんが味方についてくれたおかげで、憧れの東京に旅立てることになったんだけど、一人娘を東京に行かせることを心配する父さんの気持ちも分からないじゃない。
「父さんの知り合いの娘さんのハナシなんやけどね、大学生になって東京に行ったとたん、こう……なんていうか、変わったというか、派手になった娘さんがいて、それで父さんは心配してるとよ」
「母さん、こないだも言うたけど、あたしは大丈夫やけん、心配はいらんとぉ」
「そうそう。お父さん、そーいう意味での心配なら、弥生ちゃんには無用ですばい」
いっしょに来ていたマサ兄ぃが言った。