夕日塔の約束
私の隣で壁に寄りかかってる稚鶴は、難しい顔をして何やら考え込んでいる。


昔からこういう時は、何も聞かずに待っていた方がいいと知ってるので、私は黙っていた。


やがて毛先が肩にちょっと付く程のストレートの黒髪を翻し、稚鶴がこっちを向いた。


「夕穂……“なんで肩持つの!?”って言われそうだけど………多分下河君、本気なんじゃない?」


稚鶴がやや低めの声で告げると、私の顔が強張る。


「きっと………本当に本気だから、アンタにまた近づいて来たんだよ、彼は」


稚鶴と私しかいない教室内は、凄い深い沈黙に覆われた。
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