夕日塔の約束
信じたいのに信じてあげられない、こんな中途半端な自分が嫌だ。


とりあえず泣き止もうと、目をゴシゴシ擦る。


すると何かを決心した様な稚鶴の顔が、目に入った。


「稚鶴……?どうしたの?」


「あのね夕穂………黙ってろ言われてたんだけど……1年前、本当は下河君……」


真剣な表情の稚鶴は、私を真っ直ぐ見据えたまま、言葉を紡ぐ。


何を言われるのかサッパリ分からない私が首を傾げてると、誰かが部屋の扉をノックした。


稚鶴がガクッとなり、私に頷く。


「誰……?お母さん?」


返って来た声は、やっぱり母親。
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