夕日塔の約束
急いで振り向き、泣き声がした方を見た。


空耳か………?イヤ、絶対に聞こえた。


パッと自分で笑ったばかりの“オバケ”が浮かぶけど……無い無い無い。


高2でこんな事思ってたら直次に100%笑われるから、黙っとこう。


「誰か……いんのか?」


ソロソロと足を進めて、泣き声の場所に近づく。


コソッと、本棚の陰から顔だけを覗かせてみた。


「え………?」


目を見開く。


確かにオレの視線の先には、誰かがいた。


しかしその正体は、オバケなんかではなくって―――…


「ハァ………」


人間……夕穂だった。
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