初恋図鑑【完】

しかし、ここで、雰囲気をこわすわけにはいかないと感じた私は、質問に答えることにした。



「…あっ、えっと…小学校の子たちとは、最近会ってないかな…い、五十嵐くんは、また引っ越し…？」



「うん！そうなんだ」



「そっか…」



…ダメだ…考えないようにしてもあの時のことが思い出されてくる。



私は、震える足を押さえつけ、五十嵐くんに笑いかけた。


「あっ！じゃあ、これからよろしくね？わかんないことあったら何でも聞いて？私もわかんないことだらけだと思うけどね！」


あはは、と笑う私。


今、私は、上手く笑えているのだろうか…？



「うん！ありがとう」



私の言葉に五十嵐くんが嬉しそうに笑う。



――…

「…別に好きじゃない」



ドクンッ！



その瞬間、あの時の言葉が思い出された。



…はは…もう、大丈夫だと思ってたんだけどな…



私は、下を向いて顔を伏せた。