初恋図鑑【完】
――…
真理は、チャイムがなる前に帰ってきた。
『真理?おかえり。五十嵐くんと何話してたの?』
キョトンと首を傾げる私に真理は急に抱きついてきた。
そして、驚く私にお構い無しに
『…もうっ!あんたは〜かわいすぎんのよ〜!!自覚して頼むから!!……絶対あんなサイテー男にわたすもんですか…』
と、まくしたててくる。
いや、自覚って言われましても…てか、真理のほうが自覚したほうがいいよ。
ちらりと周りを見渡すと、クラスの男子が顔を赤くして真理を見ていた。
『心は、私が守るから!!』
何かを誓ったように拳を振り上げる真理。
…一体なにが…あったの?
私は、曖昧な笑顔を見せながら、
『ありがとう』
と呟いた。
何の意味かは、よくわからないけど…一先ず話をあわせる私。
『心!何かあったら私に言ってね!!約束よ!』
『う、うん?』
私が頷いたのを見届けた真理は、ようやく落ち着いたのかいそいそと自分の席に戻っていった。