初恋図鑑【完】



そう言って、私が顔をあげた瞬間、いきなり早苗先輩と愛先輩に抱きつかれた。



『え!?な、何事ですか』



驚いて声をあげた私におかまいなしで早苗先輩、愛先輩は、さらに抱きつく力を強めながら、



『かわいい!』



『きゃ〜、早苗先輩。いいですね。わぁ〜お肌ツルツル。』



ほっぺたを触ってきた。



『せ、先輩…』



唖然とする私。



『あっ!すっぴんなんだ?ん〜、少しメイクしたら絶対もっと可愛くなるよ!!てか、私がしてあげたい!そうだ!今度家に遊びに…って…いった〜い!!何すんのよ拓真!!』



『…お前な…何のためにみんな集まってんだよ!リレーの練習のためだろ〜が!てか、愛も少し落ち着け!!』



『えぇ〜』



なんと、早苗先輩と愛先輩を止めてくれたのは拓真先輩だった。無口だと思ったが、意外にもしゃべる人みたいだ。



しぶしぶといった感じで私から離れる早苗先輩と愛先輩。



『ったく…悪かったな…安藤だっけ?アイツらちょっとかわいいものを見るとテンションあがるらしくてさ…』




『あ…、いえ。気にしてないので大丈夫です』



『本当に悪かったな……ほら、おまえら集まれ!練習すっぞ!』



私にもう一度謝った拓真先輩は、そのまま皆に集合をかける。



どうやら…まとめ役は、拓真先輩の仕事のようだ。



私も言われたとおりに拓真先輩のほうに集まる。



『じゃあ、まず、バトンの練習な!本番に走る順番通りにバトンパスの練習するから!』


ちなみに、走る順番は、

※()の中は、50メートル走のベストタイム


第1走者→愛先輩(7秒5)
第2走者→翔先輩(6秒8)
第3走者→拓真先輩(6秒6)
第4走者→早苗先輩(7秒4)
第5走者→私(7秒3)
第6走者→五十嵐くん(6秒5)



というふうになっていた。



『よ〜し!じゃあ、まず愛から翔にパスな!!』



『は〜い』

『うぃ〜っす』



愛先輩と翔先輩が軽く返事を返していた。



愛先輩から翔先輩へのバトンパスは、きれいに成功し、その後の翔先輩から拓真先輩。拓真先輩から早苗先輩へと順調にバトンパスがおこなわれている。



『心ちゃん!』



そして、ついに早苗先輩から私へのバトンパス。



『はい!!』



少し手間取ったが、きちんとパスを成功させることができた。



『五十嵐くん!』



私も最後の走者、五十嵐くんにバトンをパスしようとした。



しかし…。


タイミングがあわず五十嵐くんは、バトンを落としてしまった。





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