あなただけを愛したい
その当時、店の人に君の名前を聞いた時“土原亜衣”と答えたのは……


そういう理由があったんだ。


でも何で君は“土原亜衣”になりきって、俺と会っていたんだろうか?


姉である“亜衣”さんが



「ずっと好きだったって言ってましたよ。身代わりでいいから一緒にいたかったって」


「……」



だからか……


いつも君が……


悲しそうな表情をしていたのは……



「柑那にほんとのことを教えてあげてください。バレンタイン前には、またあのお店を手伝いに行くはずだから」








そして……


バレンタイン前日……


俺は店の前に立っていた。



なんと声をかけよう。


君はまだ生徒だ。


目立つことはできないし、言えない。


どこで誰が見ているか分からないんだから。


でも店に入って、君の姿を見つけたとたん……



「柑那」



そう呼んでいた――…
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