あなただけを愛したい
「さ、着いたぞ」


「うん」



航の過去の話が気になったけれど、とりあえず車から降りてアパートに入った。


二度目とはいえ、あの時はかなり緊張していたし、正直どんな部屋だったか、あまり覚えていない。


部屋に入ってキョロキョロしていたら、航に笑われた。



「あはは、何してんだよ」


「なんか、緊張しちゃう」


「二度目なのに?」


「そうだけど、……あの時のことは、緊張しすぎてあまり覚えてないんだもん」



目が覚めたら、一緒にいたのがずっと好きだった人って……


緊張するに決まってる。



「マジで?俺はさ、鮮明に覚えてるけど。柑那の寝顔とか、柑那のビックリした顔とか、柑那の……泣きそうな顔とか」


「えっ?」



泣きそうな顔?


そんな顔したっけ?


……ほんとに覚えてないや。
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