あなただけを愛したい
「柑那」



航はやさしく呼んでくれるけれど、あたしは顔を上げることすらできなくて……


こうやって航と一緒にいれば、悪い人じゃないってわかる。


でもさっき見た人達があまりにも強烈すぎて、あたしの思考能力をすべて奪っていく。



「……今日は、……もう帰る」



帰って冷静になってから、考えたほうがいい。


そのほうがいいに決まってる。


このまま一緒にいても、あたしは余計なことを考えて、きっと航のことを傷つけてしまう。



「柑那、俺の話聞いてくれよ」


「……次に、会った時に、……聞く」


「……わかった。送っていくよ」



そう言って、航は車のキーを手にして、先に玄関まで行ってしまった。


もしかして、あたし……


すでに、航のことを傷つけちゃってる?



でも今は……


ちゃんと話を聞くという気持ちには……


なれなかった――…
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