あなただけを愛したい
「もうここには来てくれねぇかと思った。つか、どうやってきた?」



航のアパートは意外に遠くて、車でも30分近くかかった。



「やっちゃんに送ってもらった」


「やっちゃんって、……お姉さんのフィアンセだったっけ?」


「うん」


「……柑那」



その声に航を見上げると……


航の顔が近づいてきて……


唇が重なった。


航は啄むような優しいキスをくれる。



「兄貴って、人前でこういうことするヤツだったっけ?」


「……っ!」



慌てて航の胸を押す。


蓮くんがいたんだった。



「おまえいたの、忘れてたわ」


「ひでぇー」


「あはは」



二人は楽しそうに笑い合ったあと……



「俺、ちょっと出てくるわ」



蓮くんはそう言って、アパートから出ていった。
< 172 / 453 >

この作品をシェア

pagetop