あなただけを愛したい
「柑那って――意外に大胆なんだな」



えっ、大胆?



「まさか、素っ裸で風呂に入ってくるとは思わなかったよ」



そ、そうだった!


あたし、


なんて恥ずかしいことをしたんだろう。


今更ながら凄く恥ずかしくなって、頬に熱を持ち始める。


そんな顔をうつむいたまま上げられずにいたら……



「でも、俺は普通に嬉しかったけどな」


「えっ」



思わず顔を上げた。



「素っ裸で……とかじゃなくてさ、柑那が俺のもとへ来てくれたこと。かなり勇気振り絞ったんじゃねぇの?」



勇気……


あの時はとにかく航に触れたくて……


それでもやっぱり……


かなり勇気を出した。



「だって、……航が、溜め息をついたから」



あの時、あたしが布団に潜り込んでいた時……、航が溜め息を吐いて、そのまま部屋を出ていったことが、どうしようもなく悲しかった。


あのままの気持ちで、一人ではいられなかった。
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