あなただけを愛したい
それで喧嘩が絶えなくなって……


卒業を二ヵ月後に控えた頃に、突然別れを告げられたんだ。



「高校に入ってから、何人かと付き合ったけど、柑那ほどの女には出会えなかった。つか、柑那じゃなきゃダメだったんだよな。離れてから気付くとか、……俺、ダサすぎ」



と言って、竜一は苦笑い。



「そんなこと、……言わないでよっ」


「ん?気持ち揺れた?」



は?


どうしてそうなるの?



「揺れないしっ!」


「はは、だよな。柑那はそんな器用なことができる女じゃねぇもんな」



器用なこと?


あっちもこっちもってこと?



「あーあ、あの頃に戻りてぇ」



竜一は溜め息混じりにそう言いながら、同窓会の開催場所である部屋の襖を開けた。
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