あなただけを愛したい
田中くんって、結構おしゃべりなんだ。



「柑那に何があったんだとか聞かれたけど、あたし中学の時の柑那のことは全く知らないし」


「……うん」


「どんな柑那だったの?」


「……」



祥子にならいっか……


てか、別に隠してる訳じゃないもんね。


いまさら、以前の格好で来る勇気がないだけだもん。


あたしは二つに束ねていたゴムをほどいて、髪をおろしてから……


眼鏡を外した。



「柑、那?」


「ふふ、別人でしょ?」


「何で……その綺麗な容姿を隠してるのよ」


「隠してるわけじゃないんだけど。……あたしね、朝に弱いんだ」


「は?それが何?」


「毎朝、水島先生とあいさつをしたくて……、同じ時間に登校してるの」



祥子、呆れてるかな。



「コンタクト入れる時間も、髪に手を掛けてる時間もなくて……いつの間にか、眼鏡に二つ結びが、あたしの姿になってた」
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