あなただけを愛したい
いつまでも竜一の背中を見ていると



「柑那、惑わされちゃダメだよ」


「は?」



思わず、咲季を見た。


あたし、惑わされたっけ?



「さっきの竜一くんの言葉……あれって、“何かあれば俺んとこに来ればいい”って言ってるように聞こえた」



さっきの言葉って?



“いつか俺んとこ来る”ってやつ?



「行かないよ、アイツのところには。もう振り回されたくないし」



別れを告げられた時だって、卒業式の時だって、今日だって……


竜一の言葉に振り回されっぱなし。


付き合っていた時は、ほんとに大好きだったし、ずっと一緒にいたいって思っていたけれど……


今はもう、そんな気持ちの欠片(カケラ)もない。


あたしは航だけいてくれればいい。


隣に立っている愛しい人を見上げると、優しい瞳でこっちを見ていて……


トクンと胸が高鳴った。
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