あなただけを愛したい
「柑那?何で着替え?何で勉強道具?」


「今日は、やっちゃん家に泊まる」


「はぁ!?」



またお姉ちゃんの目が見開いた。



「お姉ちゃんも泊まるんでしょ?」


「そうだけど……、柑那はそれでいいの?ちゃんと話をしたほうがいいよ」


「……わかってる」



でも今は……


航の話をちゃんと聞ける自信も……


別れを受け入れられる自信も……


まだない。



だから、少し時間がほしい――…






しばらくしてやっちゃんがやってきた。


あたしの腫れた目を見て何かを察知したのか、


一緒に海へ行くことにも


今夜、やっちゃん家に泊まることにも


何も触れないでいてくれた。




車の後部座席に座り、窓から流れる景色を眺めた。


航と一緒に海へ行ったのは、あたしがまだ“土原亜衣”と偽って付き合っていた頃。
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