あなただけを愛したい
やっちゃんとお姉ちゃんが、小さな揉め事でも起こしたのか、あーでもないこーでもないと言い合いしてる。


その間に、あたしは砂浜に降り、波打ち際を歩いた。


歩きにくいな……


あの時は、航が手を繋いでくれたんだよね。



あー、ダメだ。



考えないようにしようとしても、どうしても航のことを考えてしまう。


それだけあたしの頭の中は、航のことでいっぱいなんだ。


ふーっと息を吐いて、そのまま波打ち際にしゃがんだ。


手を伸ばし、打ち寄せてくる海水に触れる。



「冷たいっ……うっ…く…」



もう、涙腺が壊れちゃったのかもしれない。


何を考えていても、何をしていても、涙が次々と溢れてくる。


もう、止められない。


しゃがんだまま膝に顔を埋めた。



「柑那」



いつの間にか、お姉ちゃんが横にいて、ぎゅっと抱き締めてくれた。
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