あなただけを愛したい
半ば強引に連れてこられたとはいえ、家に入る前に、ちゃんと抵抗して断るべきだったんだと反省した。


でも、この反省ももう遅い。


こうなったら竜一は――…


もう離してくれないだろうから。



流されるままに、ソファーに押し倒され……


竜一はあたしの服に手をかける。



「…ヤダッ……やめて…」



絞り出すように声を出した。


竜一の手が止まって……



「なぁ柑那、俺と付き合えよ。俺が忘れさせてやるから。おまえのこと、支えてやるから」



竜一はやさしくそう言ってくれるけれど……


忘れるために付き合うとか、あたしにはできないよ。



「柑那?」


「ごめん、……あたし、そういう中途半端なことはしたくない」


「はは、だよな。柑那ならそう言うと思ってたよ。」
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