あなただけを愛したい
「何から行く?やっぱり観覧車?」



遊園地に到着して、園内に足を踏み入れたとたん、竜一が聞いてきたけれど……


竜一と付き合っていた頃、よく遊園地でデートした。


最初と最後は必ず、観覧車だった。


だからそんなふうに言われると、あの頃に戻ったような気分になる。



「うん、観覧車から乗ろう」



あたしがそう言うと、竜一は何の躊躇いもなくあたしの手をとって、恋人繋ぎでぎゅっと握ってから、観覧車へ向かって歩き始めた。


ほんとなら、この手は振り払わなければならないのかもしれない。


だけど、今のあたしの心は、竜一のこの温もりに安心しているのも事実で……


この手に、この胸に、身を預けたいと思ってしまっている自分がいたりもする。


だけど、完全に身を委ねられないのは、あたしの中にまだ航がいるから。


どこかで、もしかしたら迎えに来てくれるかもしれないと思っているから。
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