あなただけを愛したい
「なに笑ってんだよ」



ふいっと視線をそらしながら、口を尖らせて言う竜一が、ほんとにらしくなくて、新鮮な感じがした。



「なんか、……最近の竜一って、凄く柔らかくなったよね。今の竜一、結構好きだな」



だからといって、以前の竜一が嫌いだったってわけじゃなくて……


てか、好きだったんだけど。


付き合っていた頃の竜一は、卒業式に高校へ押し掛けてきたときのような凄く強引な性格だった。


まあ、今でもかなり強引だけど。


でも、やっぱり少し柔らかくなった。


そんなことを考えていると、頭上から小さく息を吐くのが聞こえた。



「そんなに簡単に“好き”とか言うなよ。期待するだろ?」



溜め息混じりにそう言った竜一は、あたしの肩に回した腕に力を入れ、グイッと引き寄せた。
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