あなただけを愛したい
「あーっ、マジでやべぇ」



そして今度は、突然、余裕を無くしたような声をあげた竜一。


何事かと、顔をあげようとすると……



「見んなって」



そう言って、あたしの後頭部に手を添えて、そのまま自分の胸に押し付けた。


顔面が竜一の服に埋もれるように押し付けられているから、だんだん息苦しくなってくる。


程よく筋肉質な胸板をどんどんと叩いて、離してくれるように訴える。



「……ぐ、ぐるしっ……」



やっと絞り出した声を、竜一が拾ってくれて、ようやく息苦しさから解放された。


そのまま竜一を見上げると、いつも通りの彼に戻っていて……


さっきの余裕の無さそうな竜一は、もう影も形もなくなっていた。
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