あなただけを愛したい
「おいっ、柑那!どういうことだよ、あれはっ!」



竜一には、別れた原因は言ってなかった。


ほんとは、言うつもりもなかった。


もし言ったら、竜一の性格上、さらに強引になって、あたしはそれに流されちゃう気がしていたから。


でもこうやって見てしまったら、話さないわけにはいかないのかな。



「さっきの、……元カノと、たぶん子供」


「は?」


「航に黙って、航の子を生んでいたんだって」


「……」


「ヨリを、戻したのかな……あたしが、あんなことを言ったから」



『……先生と、生徒だった、あの頃に……戻ろう?』



ずっと、目の奥で今か今かと出番を待っていた涙が、勢いを増して、ポロポロと溢れてきた。
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