あなただけを愛したい
ゆっくりと走り出した車の窓から外を眺めていると……


だんだん、景色が歪んできた。


もう出ないと思っていた涙が、また溢れてきてしまったんだ。


涙って、終わりがないのかなぁ。


どれだけでも出てくるんだ。



「柑那、着いた」



そう言われて、また外を見るけれど……



「ここ、どこ?」


「とりあえず、降りようか?」



そう言った竜一は、自分が先に降りて、助手席の方へ回ってきたかと思ったら、ドアを開けてくれた。



「足元に気を付けて」



その言葉が意味するように、薄暗くて足元がよくわからない。


なかなか前へ進めずにいたら、竜一は、いつものように強引に手を引いて歩き始めた。
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